PsychoPy Builderで作る心理学実験 4th Edition

はじめに

2020年は新型コロナウイルスの流行により、大学での教育、研究が多大な影響を受けました。多くの大学関係者と同様に、私もさまざまな問題への対応に追われる日々を過ごしていますが、一方でPsychoPy Builderにも大きな変化がありました。まず、2020年2月リリースの2020.1.0よりバージョン命名規則が大きく変更され、2020.2.4のようにリリース年をメジャーバージョン番号とし、マイナーバージョン、リビジョンを組み合わせる形となりました。この2020.1.0ではRunnerというCoder、Builderに続く第3のインターフェースが実行され、実験の実行方法が変わりました。さらに、2020年8月リリースの2020.2.0ではテーマ機能導入、2021年1月リリースではプロパティダイアログの再編成がおこなわれ、見た目のデザインが大きく変更されました。これらの変更のため、本書の内容を大きく書き直す必要が出てきました。第3版からの主な変更点は以下のとおりです。

  • 新しいデザイン(テーマ)に対応しました。

  • Python2およびunicodeに関する記述を大幅に削減しました。

  • Runnerに対応しました。

  • 初出のコンポーネントのプロパティ設定ダイアログのキャプチャ画像の掲載を取りやめました(タブの増加に伴い主要項目のすべてを示すのが困難になったため)。

  • プロパティ名の変更に対応しました。なお、従来 [単位] と訳していた [Units] は現行バージョンのPsychoPyで [Units] 表記(実験設定ダイアログやPsychoPy設定ダイアログ)と [Spatial Units] 表記(各コンポーネントのプロパティダイアログ)に分かれました。将来的に両者を区別しないと意味が通らなくなるUIとなる可能性を考慮してそれぞれ [単位][空間の単位] と訳しましたが、正直なところ現状では却ってわかりにくくなってしまったのではないかと危惧しています。本文中で [単位][空間の単位] の両方に言及しないといけない場面では [空間の単位] とだけ書いていますので、必要に応じて [単位] を補って読んでください。

  • [位置 [x, y] $][サイズ [w, h] $] などでプロパティのデフォルト値がリストからタプルに変更されたことに対応して一部表現を修正しました。読者が入力する値についてはリストのままで従来通り動作するため、リストのままとしています。

  • Standaloneインストーラを使わないインストールの解説を更新しました(1章)。

  • 実験の設定ダイアログの項目の変更に対応しました(2章)。

  • カラーピッカーに対応しました(2章)。

  • Keyboardコンポーネントの [正答] の挙動の変化に対応しました(3章)。

  • Builder組み込みの条件ファイル作成機能(Pickle形式のファイルを作成する機能)の廃止に対応しました(3章)。

  • 条件ファイル選択ボタンの変更と条件ファイル編集ボタンの追加に対応しました(3章)。

  • 実験情報ダイアログの項目の順序の決まり方が旧バージョンから変更されている点に対応しました(4章)。

  • 0回ループおよびコンポーネントの無効化によるデバッグテクニックについての解説を追加しました(4章)。

  • Codeコンポーネントの紹介を6章から移動しました(5章)。

  • 複雑なコードをプロパティに直接書かずCodeコンポーネントに書くスタイルについて言及しました(5章)。

  • Textコンポーネントに$記号をつけて不正な式を入力した時の挙動が変わった点に対応しました(6章)。

  • 刺激座標の入力にCodeコンポーネントを使うように変更しました(7章)。

  • オンライン実験への対応を考慮して、条件ファイルから読み込んだ変数をCodeコンポーネントで更新しないようにしました(7章)。

  • Mouseコンポーネントの「時刻の基準」に誤りがあったので修正しました(8章)。

  • ButtonコンポーネントとVariableコンポーネントのデモを追加しました(9章)。

  • Psychtoolboxのオーディオライブラリを使う設定について言及しました(10章)。

  • %演算子による文字列への埋め込みの解説をformat()メソッドを使う方法に切り替えました(12章)。

  • Pavloviaでのオンライン実験でループを中断する方法についてのトピックを追加しました(12章)。

  • 未解説のコンポーネント一覧を更新しました(付録)。

  • 予約語の一覧を更新しました(付録)。

  • チェックリスト一覧を廃止しました(付録)。

2020年は新型コロナウイルス流行の影響でオンライン実験にも注目が集まりました。Builderはオンライン実験プラットフォームであるPavlovia用の実験の出力にも対応していますので、本書でもPavloviaを扱うべきか悩んだのですが、時間的な余裕がなく今回は見送ることにしました。その代わりというにはささやかですが、5章や7章、12章で本書の実験をPavloviaに移植する時に注意すべき点をいくつか追記しておきました。

本書の実験で使用している画像ファイルや実験ファイルは、筆者のwebページ(http://www.s12600.net/psy/python/ppb/)でダウンロードできますのでご利用ください。誤字や内容の誤りの指摘、その他内容についての要望などございましたら、十河までご連絡いただけましたら幸いです。

2021年3月9日 十河 宏行